
診察室でよくいただく質問があります。「健診の結果表に腎臓の数値が赤字で出ていたのですが、腎臓が悪くなったのでしょうか。」
結果表を受け取った日から心配が始まる方は少なくありません。インターネットで「腎不全」や「透析」といった言葉を先に目にした方なら、なおさらです。けれども、クレアチニンとeGFRはその日の体の状態によって揺れることもある数値です。ですから私は結果表を見るとき、一つの数値よりも、その数値がどこから来てどこへ向かっているのか、つまり推移を先に見ます。
今回は、健診で腎臓の数値を指摘されたときに、何をどんな順番で確認すればよいかをまとめます。
01クレアチニンとeGFRは何を見る数値なのでしょうか
クレアチニンは、筋肉を使うときにできる老廃物です。血液中のクレアチニンのほとんどは腎臓でろ過され、尿として排出されます。そのため、腎臓のろ過する力が落ちると、血液中のクレアチニンが上がります。
eGFR(推算糸球体ろ過量)は、このクレアチニンの値に年齢と性別を加えて計算した数値です。腎臓が1分間にどれだけ血液をろ過しているかを「推算」した値で、単位はmL/min/1.73㎡です。クレアチニンが上がるとeGFRは下がります。二つの数値は、同じことを反対の方向から語っているわけです。
ここで覚えておいていただきたい言葉は「推算」です。直接測った値ではなく計算した値なので、クレアチニンを動かす要因があれば、eGFRも一緒に動きます。
02一度の数値がぶれる理由
クレアチニンは、腎臓以外の影響もかなり受けます。
- 筋肉量 — 筋肉の多い方は高めに、筋肉の少ない高齢の方は低めに出る傾向があります。
- 検査前の食事と運動 — 検査の前日に肉を多く食べたり、強い運動をしたりすると、一時的に上がることがあります。
- 脱水 — たくさん汗をかいた日や水分が少なかった日、下痢や嘔吐のあとは数値が上がることがあります。
- 薬とサプリメント — 一部の薬はクレアチニンの排出に影響し、運動用のクレアチンサプリメントも数値を上げることがあります。
そのため、最初に一度高く出た結果だけで「腎臓病です」とはお伝えしません。逆も同じです。「一時的だろう」と済ませる前に、もう一度確認することが大切です。
03結果表でまず確認したい三つのこと
結果表をお持ちいただくと、私はたいていこの順番で見ます。
- 以前の結果と比べます。 昨年や一昨年の健診結果があれば、ぜひ一緒にお持ちください。同じeGFR 70でも、毎年70前後だったのか、90から70に下がってきたのかで意味がまったく違います。
- 尿検査も一緒に見ます。 腎臓の障害は、血液の数値よりも尿中のたんぱく(アルブミン)で先に現れることが多いです。結果表の尿たんぱく、尿潜血の項目も確認します。
- 血圧と血糖を見ます。 高血圧と糖尿病は、慢性腎臓病の最も多い原因です。腎臓の数値の話をするときに血圧と血糖を一緒に見るのはそのためです。

04eGFRの数値はこう読んでみてください
下の表は、eGFRを段階に分ける一般的な目安です。ただし実際の診療では、eGFRだけで段階を決めず、尿たんぱくの有無や原因となる病気も合わせて見ます。
| eGFR (mL/min/1.73㎡) | 一般的な意味 |
|---|---|
| 90以上 | ろ過する働きは正常範囲です。尿たんぱくなど他のサインがないか合わせて確認します。 |
| 60–89 | 軽度に低下した状態です。年齢とともによく見られ、他のサインがなければ経過を見ます。 |
| 45–59 | 軽度から中等度に低下した状態です。原因を確認し、定期的に管理します。 |
| 30–44 | 中等度から高度に低下した状態です。 |
| 15–29 | 高度に低下した状態です。今後の治療方針を前もって相談します。 |
| 15未満 | 腎不全の段階です。透析などの腎代替療法を一緒に検討します。 |
eGFRが80台だったからといって、すぐに心配される必要はありません。年齢とともに少しずつ下がるのは自然な変化でもあります。反対に、数値が正常範囲でも尿にたんぱくが出続けているなら、管理が必要な場合があります。
05再検査のときはこう準備してください
再検査は通常、数週間から3か月の間に行います。最初の数値がどれくらい外れていたか、他のサインがあるかによって間隔が変わります。検査の前に次のことを守っていただくだけでも、結果をより正確に見ることができます。
- 検査の前日は、肉を多く食べることや強い運動は避けてください。
- 水分はいつもどおりおとりください。わざと多く飲んだり控えたりする必要はありません。
- 飲んでいる薬やサプリメント、漢方薬は、名前をメモするか写真に撮ってお持ちください。
- 痛み止め(消炎鎮痛薬)をよく飲む方は、そのこともぜひお伝えください。
診察では血液検査と尿検査をもう一度行い、必要に応じて尿中アルブミンの量を別に確認します。腎臓の大きさや形を見る必要があるときは、超音波検査も合わせておすすめします。

06腎臓を守るために今日からできること
長い時間をかけて低下した腎臓の働きは、元に戻すのが難しい場合が多いです。ですから管理の中心は、残っている働きを長く守ることにあります。
- 血圧と血糖を目標の範囲内に保ちます。 腎臓を守る基本です。
- 食事は薄味にしましょう。 塩辛い食事は血圧を上げ、腎臓にも負担になります。
- 消炎鎮痛薬は必要なときだけ、短期間にしましょう。 長く飲む必要があるときは、前もってご相談ください。
- 成分がよくわからない健康食品や漢方薬は、飲む前にまずご相談ください。
- 禁煙と適正体重の維持も役立ちます。
水をたくさん飲めば数値がよくなるのか、というご質問もよくいただきます。脱水状態だったのなら十分な水分は役立ちますが、無理にたくさん飲んでも腎臓の働きが回復するわけではありません。腎臓や心臓の働きがかなり落ちている方は、むしろ水分を調整する必要がある場合もありますので、量は診察のときに一緒に決めるのがよいでしょう。

07こんなときは先延ばしにせず受診してください
- eGFRが60未満と出たとき
- 前回の検査より、短い期間で数値が大きく変わったとき
- 尿の泡がなかなか消えない、または尿検査でたんぱくや潜血が出たとき
- 顔や脚がむくみ、尿の量が目に見えて減ったとき
- 血圧がいつもより高い状態が続くとき
おわりに
腎臓の数値を指摘されたという知らせは、誰にとってもどきっとするものです。けれども、一つの数値で結論を出すより、以前の結果と比べ、尿と血圧・血糖を合わせて見ると、今何をすべきかがずっとはっきりします。
シン・ユンス内科医院では、高血圧・糖尿病などの慢性疾患から腎臓病、透析まで、一つの場所で継続して診ています。結果表を受け取ったら、以前の結果表と一緒にお持ちください。数値の推移を一緒に見ながら、次に何を確認するかを丁寧にご説明します。
よくある質問
eGFRが80台でした。腎臓病でしょうか。
その数値だけで腎臓病とはいいません。eGFRが60以上で、尿たんぱくなど他のサインがなければ、経過を見ることが多いです。ただし以前より目に見えて下がっている、または尿検査に異常があった場合は、一度確認されることをおすすめします。
クレアチニンだけが少し高く、ほかは問題ないと言われました。再検査が必要ですか。
筋肉量や食事、運動、脱水で一時的に上がることがあるため、もう一度確認するのがよいでしょう。再検査の時期は、最初の数値とほかの検査結果を合わせて見て決めます。
一度下がった腎臓の働きは回復しないのでしょうか。
脱水や薬など原因がはっきりした一時的な低下は、原因を解消すると改善することもあります。慢性腎臓病の場合は、残っている働きを長く守り、進行を遅らせることが管理の目標です。まずはどちらなのかを確認することが大切です。
結果表を持っていけば、すぐに相談できますか。
はい、外来の診療時間に結果表をお持ちください。以前の結果表や飲んでいる薬のリストがあれば、一緒にお持ちください。
※ この記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。検査値の意味や治療方針は状態によって異なりますので、医師にご相談ください。